極寒の再会
1月25日(木)
ホテルについて少し休んだあと、地下鉄「大邱駅」駅を出たところのユニクロに向かった。約束の17時半に間に合った。
少しして、ナム先生一家があらわれた。
ナム先生は、15年前の2009年、韓国に留学していたときの韓国語の先生の1人である。このブログで何度か登場しているので説明は省く。
国際会議のメンバーと別れて、単身「第三の故郷」である大邱に向かったのは、大邱がいまどうなっているかを知りたかったからである。しかし1人でまわっても効率が悪いと思い、いちばん連絡が取りやすいナム先生に連絡したところ、仕事が17時に終わるので、17時半に大邱駅のユニクロ前で待ち合わせましょう、ということになった。
ほんとうは、ナム先生の姉夫婦も会いたがっていたそうなのだが、ヒョンブ(姉の夫)が仕事の都合でどうしても時間が合わないということで、ナム先生一家、ナム先生ご夫妻と7歳の息子さん、とで会うことになったのである。僕はなぜか、本来は縁もゆかりもないヒョンブに好かれていて、10年以上前の2012年8月にヒョンブの家に泊まりに行って、一晩語り明かしたほどである。
ナム先生とは何年ぶりに会ったのか、よく覚えていない。息子さんが7歳になったということは、最後にあったのは7年以上前かもしれない。覚えているのは、2014年の12月25日に、韓国での仕事が早く終わったので大邱に行き、ナム先生ご夫妻と一緒に教会に行ったことである。それ以降あったかどうかは覚えていない。
ひとつ心配なのは、意思疎通ができるかどうかだった。僕の韓国語は完全に後退してしまって、国際会議でもほとんど片言で終わってしまったが、通訳がいたおかげでコミュニケーションが取れた」。ナム先生ご夫妻は、当然日本語がわからない。つまり逃げ場がないのだ。
「これから夕食を食べに行きましょう」
ナンピョン(夫)が運転する車に乗ってちょっと遠くのお店に移動するのだが、車内では矢継ぎ早にいろいろな質問が来て、それを韓国語で答えないのいけないので、かなりツラい。しかしえらいもので、ナム先生はいまでも朝9時から夕方6時まで外国人に韓国語を教えているから、平易な言葉を使ってくれて、おかげで質問の内容がすべてわかるのである。しかしそれを答えようとすると、今度はこっちの韓国語が出てこない。何とももどかしいのだが、それでも、僕のド下手な韓国語から内容を類推して、パラフレーズしてくれる。なるほどそう言えばいいのか、と、まるで韓国語の勉強をしているようだった。自分の韓国語能力の低さを、韓国語を使って救ってくれているのである。ほかの人ならばこうはいかない。
食事のあと、「私たちもまだ行ったことがないのですけれど、夜景がきれいな公園が最近できたので、行ってみましょう」と、再び乗り込んだ。12月25日~1月末までの期間のみ公園にイルミネーションがほどこされ、「サンタ公園」といわれている。
車から降りると、たしかにイルミネーションがきれいなのだが、なにしろ寒い。気温は氷点下である。あまりに寒いせいか、きれいな場所なのに、人っ子ひとりいない。
「この上に展望台があります。エレベーターがないので歩いてのぼりましょう」と、これまた寒い中、緩やかなスロープをらせん状にのぼりながら狭い展望台に着くと、夜だというのに解説員らしきおじさんがひとりいた。僕たちが熱心に見ていると、やたらと解説してくれるのである。そりゃあそうだ。寒くて展望台にはだれもいないんだもの。
「この方、日本の方ですよ」とナム先生が僕を紹介すると、その解説員は、なんと日本語で話し始めた。
聞いてみると、日本で仕事をしたことがあるらしく、奥さんは日本人だということだった。
「この展望台に立つと、市内が一望できます」
「ほんとですね」
しかし寒くて長い時間はいられず、再び長いスロープを歩いて下まで降りた。
そのあと身体を温めるために、コーヒーショップであたたかいお茶を飲みながら話をした。そこでも矢継ぎ早に質問が来る。話題は日本のアニメ「名探偵コナン」の話になった。「コナン」は韓国でも有名である。これまでずっと質問に答えるばかりだったのだが、自分から話題を出そうと、こんなことを言った。
「うちの娘は、私の仕事を知りません」
「そうなんですか?」
「だから、『パパの仕事は名探偵なんだよ』と言って、娘はそれを信じています」
「へえ、それは面白い!」
なんとか自分の言いたいことが伝わったことに、安堵した。
こうして4時間ほど、ナム先生ご一家と過ごし、ホテルの近くまで送ってもらった。
「今度はぜひ、ご家族3人で来てください」妻と娘にお会いしたいと何度も言っていた。
「わかりました」
車から降りてお別れをして、極寒の中をホテルへと向かった。
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