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時間のかかる終活

2月12日(月)

タイトルは宮沢章夫『時間のかかる読書』から一部拝借した。

狭いマンションに住んでいるのだが、職業柄、部屋は本で溢れかえっている。だが娘がこの4月から小学生になるということもあり、娘の勉強部屋を確保しなくてはならず、大幅な本の整理をしなければならなくなった。

それが直接的な理由なのだが、そろそろ人生の終盤が見えてきたこともあり、いまから終活をはじめようかとも思っていた。大病を患っていることもあり、いつ何が起こっても不思議ではない。運よく定年まで命が長らえたとしても、あと10年である。この年齢になると、もう新しい分野に手を広げることはできない。30代の頃は根拠のない万能感が自分を支配していて、関心の赴くままにいろいろな本を買っていたが、もうそんな年齢でもなくなった。「現状維持」を目標にするしかなくなったのである。

それに、定年退職をした人たちにいろいろと話を聞いてみると、やはりいちばん困ったのは蔵書の整理だという。職場に仕事部屋を持っている人は、その部屋に蔵書を押し込めればいいけれど、退職したら職場を追い出され、蔵書もすべて引き取らなければならない。定年後に家を改装して「移動式書棚」を作ったという人の話を聞いたのだが、「定年後にわざわざ移動式書棚を作る必要があるのか…」と自問自答を繰り返している。かといって、段ボールに入れて積んでいても、たぶんその先の人生では絶対に段ボール箱が開けられることはないだろう。

だとすれば、「段ボールに詰めたとして、もう絶対に開かないであろう本」を、仕事が現役のうちにできるだけ有効な処分をしたほうが、後々楽である、ということになる。そんなわけで、いまから終活をはじめることにしたのである。

蔵書整理の方針は、次のようなものである。

1.ほんとうに残す必要があるものについては、自宅に残す。

2.もはや自分が持っている必要がなく、かつ、職場の図書室に入っているのがふさわしい本であるにもかかわらず現時点で職場の図書室に架蔵されていない本については、職場の図書室に寄贈する。

3.もはや自分が持っている必要がなく、職場の図書室に入っているのがふさわしいもので、かつ職場の図書室に架蔵されている本については、しかるべき古書店に引き取ってもらう。

4.仕事に関係のある一般書で、職場の図書室に入れるほどではない本については、とりあえず実家に移動する。

5.仕事と関係のない一般書で、今後絶対に読むことはないだろうという本については、本のリサイクルショップに引き取ってもらう。

この1~5の判断がなかなか難しい。

僕としては、なるべく「2」の判断をしたい。なので、この本は職場の図書室に架蔵されているか否かを、1冊1冊検索をかけて調べて、ないものだけを選り分ける。これにはけっこう時間がかかる。

結局、大部分は「4」になってしまう。今日は段ボール8箱分を、実家に移動した。だがこれは厳密にいえば「終活のための断捨離」ではなく、「問題の先送り」に過ぎない。ただ、あるていど実家に本がたまったら、こんどは実家にある本の中で選別をして、いらない本をリサイクルショップに売らなければならない。

そう考えると、終活には思った以上に時間がかかる。

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