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手編みの毛糸の靴下

3月1日(金)

泊まっているホテルから2時間ほどかかる場所が、今日の用務先である。朝9時にホテルを出発する。

「今年は雪が少ないですね」

「なにしろ路面が見えていますからね。この時期に路面が見えているなんてことは、例年はありません」

「恐るべき温暖化ですな」

「今日は4度ですよ。この季節にしては暖かいです」

…てな会話をしながら、車は凍てつく日本海へと向かう。

(そういえば、今日の10時から職場のオンライン会議があったんだった)

いちおう出張ということで、会議には参加できないと伝えたのだが、移動中の車中では、特に何もすることがないので、スマホでZoom会議に参加することにした。

(おれはいったいこの場所まできて、何をやっているのだろう?)

最果ての地、といっても過言ではない場所である。

車が目的地に着く前に、オンライン会議は終了した。

昼食を済ませたあと、用務先に到着した。用務先の主人は気のいい女性の方だった。

「建物の中は暖房が使えないので、これを履いてください」

と人数分渡されたのが、毛糸で編んだ、スリッパみたいな靴下だった。

建物の中は畳の部屋なので、土足厳禁である。靴を脱いで、靴下だけの状態では冷えるということで、わざわざ手編みの毛糸の靴下を準備しておいてくれたのである。

大丈夫ですよ、と言ってみたが、いやいや絶対に冷えますからどうぞ履いてくださいという。

言われるがままに手編みの毛糸の靴下を、靴下の上から履いて、建物の中を調査する。

靴下の上に履くことを想定して、大きめに作ってあるのだが、ほんとうにこの毛糸の靴下が効果があるのか、半信半疑だった。

別の建物に移動することになったので、もういいだろうと思って、全員が毛糸の靴下を脱いで、やはり暖房のない畳の部屋に入る。

しばらくすると、足もとが凍りそうに冷えてきた。

あの毛糸の靴下、気休めなんじゃないだろうかと思って半信半疑で履いていたが、履くのと履かないのとでは、こんなに体感温度が変わるものなのかと驚いた。

また別の建物に移動するときに、「やっぱり履きます」と、全員がもう一度毛糸の靴下を履いて畳の部屋に入った。

するとやはり全然足が冷えない!

恐るべし、手編みの毛糸の靴下である。

「疲れ切った足もとから、すべて凍りつくしても」

という樋口了一さんの「1/6の夢旅人」の歌詞は、本当だったんだな。

「この手編みの毛糸は、近所のボランティアの人たちが編んでくれて、お客さんが来るたびに履いてもらっているのです」

とこの建物の主人は言った。その話がますます足を暖かくした。

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