気分はピン芸人
5月25日(土)
新幹線で北に向かう。
僕の師匠にあたる方が講演会をするというので、日帰りで聴きに行くことにしたのである。というよりも、その講演会は僕が何かとお世話になっている方が企画したもので、ある日「ぜひ講演会においでください」というメールが来たので、日ごろの恩返しのつもりで行くことにしたのである。
幸いにも天気がよかった。
会場に早めに着くと、たちどころに何人もの知り合いに会う。
以前一緒に仕事をした若い担当職員の方が、
「ご無沙汰しております」
とやってきた。さらに若い職員を連れている。
「この4月からうちの職場に来た新人職員です」
名刺を交換しようとすると、
「あのぅ…実は昨年まで学生をしておりまして、昨年8月の研修に参加した者です」
「あ、あのときの!?」
「ええ。その節は大変お世話になりました」
「あのときは炎天下の中を歩きましたよねえ」
「ええ、暑かったです」
「ここに就職されたんですか」
「ええ」
なんと世間は狭いことか。
そんな会話をしていたら、この講演会を企画した方がいらして、
「お昼はすませましたか?」
「いえ、これからです」
「では昼食後に講師控室にいらしてください。教育長と部長もいらっしゃいますので」
「でも、僕は講師ではありませんよ」
「日ごろからお世話になっておりますのでぜひ」
なぜか僕は講師でもないのに講師控室に通された。もちろんそこには師匠もいて、もっぱら僕は師匠の話を黙って聞く役割だった。
しばらくの間、手持ち無沙汰で講師控室にいると、
「リハーサルをしますので、ホールにお越しください」
と、スタッフが呼びに来た。別にコンサートではないのだからリハーサルというのもおかしな話だが、パワーポイントの動作確認とか、レーザーポインターの使い方とか、マイクの調子を確認するための準備をするらしい。
「鬼瓦先生もご一緒にどうぞ」
だから俺は講師でも何でもないんだって!たんなる客なんだぞ!と思いながら、開場前のホールに入って、なぜかリハーサルに立ち会うことになった。
やがて開場の時間になると、次から次へとお客さんが入ってきて、700人ほど入るホールはほとんど一杯になった。
そしていよいよ開演。
若い頃は責任感なく講演会を聴きに行ったりしていたが、自分が講演会の講師を頻繁にするような立場になってしまったいまでは、登壇する演者の気持ちになり、講演会を冷静に聞くことができなくなってしまった。
じつに久しぶりに師匠の講演を聴いたが、ヒヤヒヤのし通しだった。
講演会は、いってみればピン芸である。だからピン芸人の気持ちが、少しだけわかる。こんなふうに、ヒヤヒヤし通しなんだろう。
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