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大捜索

僕がまだ大学院生だった頃だったからいまから30年ほど前になる。そのときに同じ研究室の仲間たちと整理したモノどもが、実は大変貴重なものだったのではないかと、いまになって強く思うようになった。

もちろんその当時も貴重なモノどもであるという認識はあったのだが、その当時の僕たちが思っていた以上に貴重だといまになって思ったのである。

思い立ったが吉日、とばかりに、月曜日(5月13日)に、研究室の助教さんにお願いして、現況調査を行うことにした。

まず、30年ほど前に整理したモノどもの行方がわからない。というのも、その整理の陣頭指揮をとった教員が10年ほど前に定年退職してしまい、それを機に部屋を整理したそうなのだが、それらをどこにしまい込んだのかがわからないからである。当時作成した目録と照らし合わせると、おそらく100点以上はあったはずだ。

助教さんがあらかじめ調べてくれたのである程度の所在はわかったが、しかしそれは一部に過ぎなかった。ぼくらはそれを、目録と対照させながら、あるモノとないモノの把握に努めた。では、ほかのモノはどこに行ってしまったのか?

もう一つ探していたのは、それらのモノを撮影した写真類である。当時、そうとう手間をかけて1点1点の写真の撮影を、カメラのプロの方に依頼して撮影してもらったのだが、そのネガフィルムと紙焼き写真が見つからない。僕は当時、写真撮影をある方にお願いした当事者だったから、記憶違いということはあり得ない。たしかに写真を撮影してもらったのである。その写真のネガフィルムと紙焼き写真が納品されたこともはっきり覚えている。

そのカット数は100点以上に及ぶと思われるが、それらを、スチールの棚に保管しておいたのだが、その棚はずいぶん前に撤去されたとのことだった。

ではその棚の中身はどこに行ってしまったのか?

「退職した教員が退職のときにダンボールに入れて持って行ってしまったのではないでしょうか?」

「まさか、私物ではなくて公費で撮影した写真ですよ」

と言ってから思い出した。前科があることを。

いやいや、そんなことはないだろう、この大学の中にあるはずだと、助教さんは関係のありそうな場所や思い当たる場所を捜索してもらったが、見つからない。

「やはり持って行ってしまったか…。ちなみにダンボール箱はどこへ持っていったのですか?自宅?」

「いえ、なにしろ数百箱ありましたので、ここから1000キロ弱のところにある施設に寄附されました」

なんと!

「ではそこにいる人にお願いして、該当する写真があるかないかを確認してもらう必要がありますね」

というわけで、そこの施設の人に問い合わせてみた。すると、

「整理が追いつかず、未開封のダンボール箱が数百箱あって、その中に入っているかもしれませんが、よくわかりません」

という回答だった。寄附を受け入れたはいいけど、あまりに量が多すぎてダンボール箱を開ける気力もなくなったのだろうな。

かといって、ぼくらが1000キロ弱離れたその施設に行って、一つ一つ箱を空けながら確認するなどというのは現実的ではない。先方も嫌がるだろう。何よりうっかり箱を空けてしまうと、そのあとそれらをその施設の人たちが整理しなければならないことになり、余計な仕事を増やすだけである。

ということで、結局行方はわからずじまいだった。万事休すか?

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