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やんごとなき場所へ

6月10日(月)

あるものを納品するために、都内にある「やんごとなき場所」に行かなければならない。

そのためには、やや面倒な手続きを経なければならない。

まず、職場に行って、納品するものを受けとる。

それをもって、都内のやんごとなき場所へ移動する。

電車移動なので今日は車通勤ではなく、電車通勤である。

電車で2時間以上かけて職場に行き、納品するものを受けとり、それをもって、電車で1時間半ほどかかる都内のやんごとない場所に移動する。もちろん納品するものになんかあっちゃいけないので、電車の中での取り扱いも注意しなければならない。ま、そのへんは担当のもう一人の同僚がやってくれるので心配はないのだが。

日ごろ電車通勤になれていない僕は、少し歩くと足の裏が痛くなるのだが、もう一人の同僚と歩調を合わせないといけないので、少しばかり痛みをこらえながら歩く。

納品先の入口に着くと、まず警察官に止められる。もちろんあらかじめ訪問する二人の名前と訪問先は告げてあるのだが、入口で訪問カードに名前と身分と訪問先を記入し、さらに身分証明書を提示しなければならない。

さらに面倒なのは、訪問カードに、「最後にあった人物のサインと退出時間」を、先方に書いてもらわないといけないということである。

以前はそこまで書く必要がなかったのだが、以前訪れた人の中に、目的外の場所に行ったりした人がいたために大騒ぎになったという事件があったそうで、それからは「最後に会った人に退出時間を書いてもらう」という欄を新しく設けたようだった。

「ここは書いていただかないと、お互い面倒なことになりますから」と警察官がやんわりと言ったが、「お互い面倒なことになる」というのは、つまり「警察沙汰になる」という軽い脅しにも聞こえる。

すでにここまで来たとき、僕は汗だくになった。ふだん着慣れない背広を着て、日中の都内を歩いたものだから無理もない。曇り空で気温もそれほど上がらなかったのだが、それでも汗が止まらなかった。緊張のせいもあっただろう。

納品先にお邪魔し、ご挨拶をして、その建物でいちばん偉い方に納品物のご説明をして、儀式は終わった。

そのあと、同僚と二人で、その建物で勤務している何人かの知り合いと久しぶりに会い、雑談をした。それによって少しクールダウンすることができた。

さあ、最後のミッションである。

雑談が終わり、「最後に会った人物に、サインと退出時間を書いてもらう」ことをお願いして、無事に書いてもらった。

「ではまた」といって別れて、廊下を歩いていると、見たことのある人とすれ違った。

「Aさん?」

「ええ、…どちら様ですか?」

「鬼瓦です」

「鬼瓦先生!」

「前の前の職場」での教え子…正確にいえば教え子ではないのだが、とにかく「前の前の職場」の卒業生のAさんが、たまたま廊下を歩いていたのである。

Aさんはこのやんごとない場所に勤めて20年くらい経つだろうか。在学中から知っていたし、このやんごとない場所に勤めはじめた頃にも会ったことがあった。

「雰囲気が違っているので全然気がつきませんでした。髪も短くなって…」

Aさんは本当に気づかなかったらしい。

「薄くなっただけですよ。それに髪も白くなってしまいましたよ」

そこからひとしきり、「前の前の職場」の話題が盛り上がった。

「今日鬼瓦先生にお会いしたこと、みんなにLINEします」

と言っていたが、いまでも卒業生同士がつながっているのか???

廊下での立ち話だったが、もう一人の同僚はソワソワしている。

(いけね!すでに最後に会った人に退出時間を書いてもらっていたところだった!)

書いてある退出時間を大幅に過ぎてしまうと、帰りの検問のところで「面倒なこと」になってしまう。

「じゃあまた!」

と言って話を切り上げ、急いで出入口のところに向かった。

待ちかまえていた警察官に訪問カードを渡し、とくに問題になることもなく、無事に帰ることができた。

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