北の町の再会・夏編
7月6日(土)
北の町での用務が終わった夕方、この町に住む卒業生のOさんとお会いした。
2020年4月から5年間、毎年2月初旬に僕はこの町でちょっとした講演をすることが課せられているのだが、最初の2年間は、新型コロナウィルス感染拡大を恐れてオンライン開催だった。ようやく昨年(2023年2月)になって現地での対面開催が叶い、今年(2024年)2月がその2回目だった。あともう1回で終わりである。
Oさんはその2回とも、講演会に来てくれた。しかし休憩時間に挨拶をするていどの時間しかなく、近況などを聞く暇もなかった。今回は講演とは別の用務だったが、少しだけ時間をもらって、新幹線の時間までお喋りをすることにした。
以前にも書いたが、Oさんはこの町に住む小説家である。在学中から、というより高校時代から小説を書いていたが、大学を卒業してからも、そして結婚して子どもを産んでからも小説を書き続け、電子書籍を中心に出版していたようだが、昨年、満を持した小説が紙の文庫で発売され、書店で平積みになっているのを発見した。自分の好きなことを手放さずに続けたことが大きな実を結んだのだろうと僕は感慨深く思った。
子どもというのは、小3,小1,3歳とまだ幼い3人である。僕の小1の娘とほとんど変わらない。1人だって持て余しているのだから、3人を育てるのはいかにたいへんか…。
「うちの子、ピアノをやめちゃったんですよ」
「えっ!うちもそうだよ。まったく練習しないんだよ」
「うちもそうです」
ピアノというのは、やはり誰もがぶちあたる壁なのだろう。
あとは最近関心のあることについて聞いたり、こっちの仕事の話をしたりしたのだが、話しているうちに、意外な事実を知った。
Oさんのお連れ合いは、同じ大学にいた学生だったと初めて知ったのだが、文系ではなく、工学系の学生だったそうである。
「私の夫が1年生の時に、先生の教養教育の授業を受講していたんですよ」
「えええぇぇぇっ!そうだったの?」
ちっとも知らなかった。
「教養教育の文系の授業の中で先生の授業がいちばんおもしろかった、って、いまでも言ってるんです」
それはお世辞でも嬉しい。いまでも覚えていてくれているんだな。
話を聞いている限り、Oさんのお連れ合いは思索的な人で、ときどき小説を書くアイデアをそれとなく示唆してくれるのだという。Oさんは文系で、お相手は理系だけれども、発想の違いが思わぬ化学反応を起こして小説に結実するなんて、理想的ではないか。
もうひとつ話を聞いて驚いたのは、AmazonAudibleでオーディオブックになっている僕の本が1冊だけあるのだが、そのオーディオブックを最後まで聴いたというのである。
「4回聴きました」
「えええぇぇぇっ!4回も!?だって全部聴き終わるまで8時間かかるって言っていたよ」
書いた僕自身ですら、クドい文章だなと我ながら反省し、途中で聴くのをやめてしまったほどである。それを4回もくり返して最後まで聴いたとは!
「2倍速で聴いたので、8時間ではなく4時間でした」
そこでハタと気づいた。そうか、オーディオブックはさまざまな世代に聴いてもらうために、デフォルトではわざとゆっくりと読んでいるのだな。若い人にとっては、2倍速で聴くとちょうどよい仕組みになっていたのだ。プロの声優さんが読んでいるから、2倍速で聴いても聞き取りやすいのだろう。あらためてプロの声優さんってスゲえと思わずにいられなかった。
もちろんOさんは何か用事をしながら聴いているとのことで、効率よく、そして心地よく聴いてもらっているようで安心した。Oさんの小説も、遠からずオーディオブックになるだろう、というかそれを聴いてみたい。
あっという間に帰る時間となった。再会を約束して新幹線の改札口に入った。
吉報を待っているぞ!
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