来客対応
8月9日(金)
朝4時半に起きた。
先日の火曜日に父方の伯母が93歳の大往生を遂げ、今日の午前9時から告別式があるという。家族葬ということで僕は参列しないのだが、僕の母が参列することになっていた。母の実家から斎場まではけっこう遠くて、電車やバスを乗り継いで行けないこともないのだが、この暑さで放っておくわけにはいかない。ということで、早朝に母の実家まで車で迎えに行き、斎場まで乗せていくことにした。幸いというべきか、斎場の場所は僕が職場に行く途中のところにあるので、斎場のところで母を降ろしてすぐに職場に向かえば、10時前に職場に着くことができる。
朝6時。自宅から実家に着いた僕は、母を乗せ、隣県の斎場へと向かう。早朝だったので車の流れはほぼ順調で、8時前には斎場についた。ただし告別式は9時からなので、当然斎場には伯母の家族もまだ来ていない。
一人だけ男性がいたので、
「○○家の斎場はここですか?}
と聞いたところ、
「はい、私は葬儀屋の者です。まだどなたもお見えになっていませんが、中にご案内いたします」
いかにも葬儀屋さんらしい丁寧な口調だった。母と僕は斎場へと入った。
「どうぞご対面ください」
と促され、お線香を上げたあと、母と僕は棺の中の伯母と対面した。告別式には参列できないが、伯母とは最後のお別れができた。
斎場に母を残し、僕は急いで職場に向かった。
今日の本題はここからである。
そもそもの発端はこうだ。
今年の春頃、うちの社長のもとに、ある民間の大企業の社長から電話があった。うちの社長とその大企業の社長は、ある人の紹介ですでに面識があるのだという。
大企業の社長曰く、今年度、社内で、半分仕事で半分趣味のような「部活」を立ち上げました、この部活の活動についていちどご相談にあがりたい、と。
で、うちの社長が、その部活の活動内容であれば、鬼瓦が相談相手になるのがよかろうと判断し、僕のところに話が来た。
「悪いが先方の相談相手になってほしい」
僕は状況が飲み込めず面食らったが、断るわけにもいかず、巻き込まれることになった。相談、って、いったいどんな相談なんだ?
そして今日。
10時半過ぎに社長ご一行がお見えになり、うちの職場の社長室で対応することになった。
「ご一行」といったのは、社長だけでなく3名の部下も同行していたからである。どうも社長の趣味ではじめた部活に入部させられたらしい。先方の社長も、部下を巻き込むタイプの人のようだ。
名刺を交換し、社長の趣味活動につきあわされてたいへんですね、という意味で、
「お三人は大丈夫ですか?」
と冗談交じりで問いかけると、ニコニコしてうなずいていた。
当日の予定は以下のようになった。
まず社長室でうちの社長をまじえて、先方が40分ほど今回の訪問の趣旨を説明する。その後、14時半まで職場を見学してもらい、14時半からは、先方の本来の目的である「相談」に乗ることになった。そして17時過ぎから、近くのお店で懇親会をする。…と、こんな段取りである。
うちの社長は日中に所用があるとかで、「鬼瓦君、後はよろしく頼む」と任されてしまった。職場見学はご一行に自由にしていただくとして、14時半からの「相談」には僕1人が対応しなければならない。
14時半まで少し時間があったので、仕事部屋に戻って仕事をしていたら、あっという間に14時半になってしまった。結局仕事はいくらもできなかった。
急いで応接室に向かい、職場見学から戻ってきたご一行を迎え入れた。
「相談」の時間には、先方の社長を中心に、矢継ぎ早に質問が投げかけられ、僕はその質問に対してひたすら打ち返す、という形で、あっという間に2時間半が経過した。時計を見るとちょうど17時だった。
そこから休む間もなく、職場を出て懇親会場に向かう。うちの社長も遅れて合流した。先方4名、こちら側4名の8名である。
ここの読者はおわかりの通り、僕は懇親会が大の苦手で、これまでもピクニックフェイスを維持することでなんとか乗り切ってきた。僕以外はみなさんお酒を飲み、気分よく話をしている。とくに隣に座っているうちの社長は、先方の社長やその部下たちと意気投合し、生き生きと会話をくり広げた。僕はその隣で、あまり出しゃばるのも失礼だと思い、ピクニックフェイスでそのお話を聞いていた。ときには「昭和」を思わせる話題もあり、こりゃあリアルな「不適切にもほどがある」を見ているみたいだなと、タイムスリップした感覚にも陥った。
2時間の予定が、会が盛り上がって4時間近くに及んだ。さあお会計という段になって、先方の社長が、
「今回だけは(割り勘ではなく)うちで持たせてください。鬼瓦さんから2時間半のお話をいただいたので、その授業料です」
と言って、支払いは先方持ちとなった。
夜遅く帰宅すると、先方の社長から僕宛にメールが届いていた。しこたま飲んだあと、帰宅されてすぐにメールをくれたようだ。
「ゲリラ豪雨のような訪問者4名に対し、慈悲を以て3時間近くお付き合い下さりました事、心より御礼申し上げます。おかげさまで相当程度、頭の整理が進みました。メールで失礼ながら心より御礼申し上げます」
と書いてあった。
さあ、明日からお盆休みである。
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