きみの色
9月8日(日)
小1の娘と2人でアニメ映画『きみの色』(山田尚子監督)を観に行った。
少し前、おなじ山田尚子監督のアニメ映画『聲の形』(2016年)がテレビで放映されていて、それを娘が熱心に観ていて、僕はそれを横からチラチラと見たていどだったのだが、なんというか心がざわつくような映画だなと気になっていたら、どうやらこの映画がテレビで放映されたのは、山田監督の最新作のプロモーションらしい、ということがわかって、それでその最新作『きみの色』を観に行くことにしたのである。恥ずかしながら山田尚子監督のお名前を知ったのはこれが初めてだった。
あるサイトに載っていた作品情報を一部引用すると、
「全寮制のミッションスクールに通うトツ子は、うれしい色、楽しい色、穏やかな色など、幼いころから人が「色」として見える。そんなトツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみ、街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年・ルイの3人でバンドを組むことになる。離島の古い教会を練習場所に、それぞれ悩みを抱える3人は音楽によって心を通わせていき、いつしか友情とほのかな恋のような感情が芽生え始める。」
とある。多少補足すると、「全寮制のミッションスクール」というのは思いのほか規律の厳しい学校で、教師はみなシスターとして敬虔な服装をしている。規律に違反すると反省文を毎日書かされたり、奉仕活動を行わなければならない。実際にミッションスクールというのは、一概にそういう学校なのかどうかはわからない。
トツ子、きみ、ルイの3人は、それぞれ家族に対して秘密を抱えながら、ひそかにバンドの練習をするが、唯一の理解者であるシスター日吉子がそのことを知り、学園祭でバンドのライブをしてほしいと3人に提案する。いままでそれぞれ家族に対して秘密を抱えていた3人(とくにきみとルイ)は、家族に本当のことを打ち明け、学園祭のバンドのライブに来てほしいとお願いをする。
そして学園祭の日、幕が上がる。何も聞かされていない生徒たちは、いきなりバンドライブが始まったことに戸惑うが、次第に会場は盛り上がり、シスターたちも曲の動きに合わせて踊り出す。わだかまりのあったきみの祖母やルイの母も駆けつけ、物語は大団円を迎える。
バンドの曲調は、YMOというより、TMネットワークに近いテクノサウンドで、まず僕はそこに心を奪われた。映画のエモーショナルな場面は、いうまでもなくこの学園祭でのライブで最高潮に達する。
おそらくこの場面を観てすぐに連想されるのが、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『天使にラブソングを』であろう。たしかに『天使にラブソングを』へのオマージュが含まれているであろう点は想像に難くいない。
しかし僕がこの場面から直ちに連想したのは、芦原すなお原作・大林宣彦監督の映画『青春デンデケデケデケ』である。あの映画も最後の場面では、高校生のロックバンド「ロッキングホースメン」が、文化祭の時に体育館でライブを行い、生徒たちはもちろん、家族を始めとする「ロッキングホースメン」にゆかりのある人たちがライブに集合し、曲に合わせてノリノリの動きを取りながら彼らの活動を賞賛するのである。
『青春デンデケデケデケ』との共通点はほかにもある。『きみの色』では、学園祭のライブが大成功を収めたあと、3人のうちのひとり、ルイが大学受験のために船で島を離れて東京に出発し、ほかの2人がルイを送り出す場面が感動的だが、『青春デンデケデケデケ』もまた、バンド結成を呼びかけた「ちっくん」が大学受験のために故郷を離れる際に、逡巡する「ちっくん」をほかのメンバーが励まし、送り出すのである。
さらに、映画では唯一彼らの活動に理解を示すシスター日吉子(声:新垣結衣)が彼らの活動を後押しするが、『青春デンデケデケデケ』でも、唯一の理解者である寺内先生(岸辺一徳)が、高校でのバンド練習に力を貸す。つまりシスター日吉子は、寺内先生なのである。
これはもうまぎれもなく、『青春デンデケデケデケ』へのオマージュ作品だ。
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コメント
実は少し前に、わたくしめもアニメ映画を見に行った。
原作者が県内の大学を卒業したようで、それと分かる校舎が出てきた。
ラジオの映画評では、いい大人が号泣する作品と聞いていたが、そうでもなかった。
AIに面白ソングを作曲させて悦に入るくらいのクリエイティビティでは、感情移入が乏しかったからもしれない。
いや、まてよ。
振り返るとこのふきだまりブログって、
俺がコブモトで、鬼瓦さんがオニノなのか?
投稿: 🐢🎬 | 2024年9月16日 (月) 13時17分