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気軽に散歩をするつもりだった

10月12日(土)

朝は無事にチェックアウトできた。鍵を返そうとすると、耳の遠いおじいちゃんではなく、今度はおばあちゃんだった。家族経営のホテルなのだろう。

会合は万事順調に進み、少し時間をオーバーしたが、充実した会合になった。

ちょっとだけ解放された気分になり、せっかく職場の近くで秋祭りをやっているし、今日はその最終日なので、お散歩がてら秋祭りの様子を見に行くことにした。秋祭りの会場の近所に住んでいるという若者に聞いてみると、職場の反対側に延びている遊歩道を歩いて行くのが起伏がないので楽ですというので、それなら行けそうだと歩き始めた。しかしまだ昼食をとっていない。昼食をとるのに少し遅い時間になってしまったが、これもせっかくだから、お祭りの屋台で何か食べようと、期待に胸を膨らませた。

最初は順調に歩いていたが、遊歩道が終わると一般道に変わり、車の往来も激しくなった。車に気をつけながらゆっくりと歩いていると、お囃子の音が聞こえてきた。秋の祭礼の拠点ともいえる神社はもうすぐだ。ひょっとして神社の境内でお囃子をしているのかな?と期待したが、さにあらず。お囃子は電信柱に設置されたトラメガみたいなスピーカーから流れていたのだ。

何だよ、期待したじゃないか、と思いつつ辺りを見回すと、屋台なんてほとんどない。本来ならば交通規制の対象となっている道路も、車がビュンビュン走っている。

そこでハタと思い出した。交通規制は15時~22時と書いてあったことを。つまりお祭りのメインは、夕方なのである。その頃になってようやく屋台が賑わうのである。

(昼食にありつけなかったか…)

ではせめて神社に行こうと境内に入ろうとすると、大きな山車が境内の入口を塞いでいる。「1年は、この秋祭りのために生きています」とおぼしき老若の男性が、山車の飾り付けの準備をしていた。老若の「老」のほうの男性は、とくに手伝うわけでもなく、ひたすら過去の武勇伝を若者に語っている。よくある風景だ。

僕は微笑ましく思いながら、山車の横をすり抜け、神社の境内に入っていった。10年もこの職場にいながら、この神社の境内に入るのは初めてで、思っていたよりも狭い境内に、ちょっと拍子抜けした感じになった。

ここまで、ふつうの足取りであれば15分くらいで着くだろうが、僕の足取りでは倍の30分くらいかかってしまった。というのも、ここまでの道を歩いていたら、なんとなく両足がつるような気配がしたので、なるべくゆっくり歩いたのである。

(これは、両足が動かなくなる前に戻った方がいいな)

15時まで待つのも手持ち無沙汰なので、仕方なく、来た道をゆっくりと戻りはじめた。

一般道から遊歩道にさしかかる頃、ついに両足が爆発した。完全に足がつってしまったのである。

イタいイタいイタいイタい!!

なんというポンコツな身体だ。むかしだったらこの程度の距離はなんともなかったのに、いまは「人に見られるのが恥ずかしい」ほどの歩き方である。知り合いに見られたらどうしようというよけいな自意識も頭をもたげてきた。

水分をとればなんとかなるかなと、自販機でスポーツドリンクを買った。当然ながらすぐに効果はあらわれない。とにかくいまは座りたい。

遊歩道を少し進んでいくと、木製のベンチを見つけた。ひとまずそこに座り、スマホで「足がつったときの対処法」を検索した。

そしたら、足がつる原因が書いてあるサイトを見つけた。

「足がつる原因は、水分不足やミネラル不足、加齢や疲労、冷え、運動不足、ストレスなど様々であり、…50歳を超えると全員が”足がつる”経験をしたことがあると言われています」

全部あてはまるやないかい!

つまり教科書通りに、僕は足がつったのである。

では対処法は?

「1.筋肉を伸ばすストレッチをする。

 2.つった部位の筋肉を優しくマッサージすることで筋肉の緊張をほぐせます。

 3.水分・電解質の摂取。脱水や電解質の不足が原因となっている場合、スポーツドリンクが効果的」

僕はある事情で、最近水分摂取を控えていたのだが、背に腹は代えられない。先ほど勝ったスポーツドリンクを飲み干した。

次にストレッチをおこなう。これはストレッチの方向を間違えると、別のところがつったりするので、慎重におこなわなければならない。

そしてつった部分を優しくマッサージする。次第に痛みがなくなっていく感覚になった。

そろそろ大丈夫かと思って立ち上がると、

イタいイタいイタいイタい!!

元の木阿弥になった。こんなことをくり返していると、一生このベンチから立ち上がることができなくなる。このベンチから動けなくなり、やがて朽ち果てていくかと思うと、涙が出た。

こうなったら救急車を呼ぶしかないとまで考えたが、そもそもこの遊歩道には救急車が入ることはできなさそうである。

もう打つ手はないので、ストレッチとマッサージをゆっくりとくり返しながら、「痛いの痛いの飛んでけ~」と、いま娘に言い聞かせている呪文を心の中で唱えた。もう慌てることはない。完全に痛みが治まるまで、このベンチに座っていよう。

するとあら不思議、時間薬というべきか、足のつりが次第に解消されていくのを感じた。だが先ほどのこともあるので、立ち上がるタイミングは慎重に見定めなければならない。

何分経っただろう?20分くらいだろうか、それ以上か?回復したことを確信し、ベンチから立ち上がったら足の痛みはなくなっていた。

だが僕は知っている。歩き始めるとまた足がつりはじめることを。

予想通り、歩き出すと足がつる気配がしてきた。

(頼む、職場に戻るまではがんばってくれ!)

と慎重に歩みを進め、なんとか職場に戻った。その途端、再び右足が完全につったので、仕事部屋の椅子に座って、マッサージをくり返した。

もうとっくに秋祭りが盛り上がっている時間だ。

たったこれだけの散歩で生死を彷徨う思いをするなんて、なんというポンコツな身体だ!やはり昨日に引き続き「引退」という2文字が頭をよぎった。

誤解のないように強調しておくと、これは自分が引き起こした問題であり、健康管理を怠っている私自身にすべての責任がある。この点は、強調してもしすぎることはない。気候がよくなったので、これからは散歩リハビリをします。

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