« 会議をすっぽかす | トップページ | 救世主あらわる »

なし崩し的に進む政治

「衆議院解散って、よくわかんないけど、内閣不信任案が可決された場合に内閣総辞職するか衆議院解散するかを選択するんじゃなかったっけ?総理の気まぐれで解散できたんだっけ?」

ってつぶやいたら、全然知らない人が、

「憲法第7条による解散です。7条3号に、天皇は、内閣の助言と承認により、衆議院を解散することと定められています」

と教えてくれた。もちろん「7条解散」という言葉は聞いたことがあるが、しかし教えてくれたことは答えになっていないようにも思えた。

そこで、日本国憲法を調べてみた。すると7条に、

「第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」

とあり、その第3項に、

「三 衆議院を解散すること。」

とある。しかしこれだけではよくわからない。

日本国憲法の中に、解散という言葉は意外と少なくて、

「第45条 衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

「第54条 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。

2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」

「第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」

この6カ所である。第7条も含めて4条分しかない。

で、僕が習ってきたのは、69条による解散だった。つまり不信任決議案の可決もしくは信任決議案の否決の場合に、解散か総辞職を選ばなくてはならないと習ってきたのである。

頭の悪い僕は、それ以降法律の勉強をしてこなかったので、「7条解散」という言葉も最近知ったのだった。

しかし第7条を読んでみても、たとえば「民意を問う」の理由で解散してよいなんてひと言も書かれていないし、「解散は総理の専権事項である」ともひと言も書かれていない。天皇の国事行為として解散を行うこと、つまり「解散の詔書」にもとづいて解散をする、ということしか書かれていないのである。これをどう読んだら、「解散は総理の専権事項」とか「民意を問うために解散する」と解釈できるのかがまったくわからない。僕の頭が悪いことは重々承知している。

ふつうですよ、日本国憲法には衆議院解散の定義は69条にのみ書かれているのだったら、7条の「解散」は、69条のような事態になった場合の「解散」のことを想定していると考えませんか?かんたんな国語の問題です。

こんなことを思ったのは、つい最近、現職の兵庫県知事に不信任決議案が満票で可決した際に、知事は辞職するのか、あるいは議会を解散するのか、あるいは議会の解散を判断しないまま失職するのか、という選択を迫られた、というニュースを目にしたからである。もちろん全然違うレベルの話かもしれないが、それとも知事は、総理大臣と同様、「議会解散は知事の専権事項」として、自分の好きなタイミングで議会を解散できるんだっけ?

まったくもってよくわからない。

もちろん、これについて憲法学者の先生の間で長い長い議論があることはよく知っている。どうやら、なし崩し的に「7条解散」が都合よく解釈されてきた歴史があるらしいということもわかる。しかし、僕が日本国憲法を読む限り、これって憲法違反なんじゃねえの?とつい思ってしまうのだが、党首討論においても、メディアにおいても、まったく取りあげられることはなく、これってどういうことなのだろうとますます疑問が深まるばかりである。

なんとなくなし崩し的に進むのがこの国の政治なのだとしたら、僕たちはいつまでそんなことにつきあわされるのだろう。

|

« 会議をすっぽかす | トップページ | 救世主あらわる »

ニュース」カテゴリの記事