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一難去ってまた一難

10月4日(金)

午後は職場でやや重い会議である。

社長室の隣の応接室で行われたのだが、防音設備が整っているにもかかわらず、隣の社長室から社長の高笑いが聞こえた。何か面白いことでもあったのだろう。それにしても防音壁をも突き抜ける高笑い。こっちはその笑い声に気がとられて、なかなか考えがまとまらない。

結論が出たのか?出なかったのか?わからないまま2時間の会議が終わった。

社長が高笑いしていたということは、時間に余裕があるんだなと思い、社長に直接報告しなければならないことをこのタイミングで報告することにした。ひとまず本社からの理不尽な要求を回避したという報告である。

トラブルが解決したことを報告することほど清々しいことはない。

これは僕の自慢なのだが、僕は揉め事を丸くおさめるのがわりと好きである。落語「居残り佐平次」が元ネタの映画『幕末太陽伝』(川島雄三監督、1957年)が大好きで、その影響を受けたからだろうと思う。

それが終わると、来週から始まるイベント会場に行き、会場の様子を確認する。別にだれに頼まれているわけでもないのだが、やはり準備の最終日なので気になる。それに、たとえ自分の役割が終わっても、そのイベントの末席に連なる者として、準備の最後まで見届けようとする姿勢を見せることが、このイベントのために尽力している人たちへの礼儀なのではないかと思ったりもする。どうやらイベントは無事に開きそうだ。

それが終わると、今度は若者の文章の添削をしなければならない。こちらも来週、みんなの前でその若者がプレゼンをすることになっていて、PPTは以前に添削したのだが、今度はプレゼンの際に読みあげる原稿を途中まで書いたので読んでくれと言われたのである。

うーむ。読んでみるとなかなか伝わりにくい文章である。僕はつい添削癖が顔を出して文章を真っ赤に直して、どういう点を工夫したらよいかを、若者の反応を見ながら説明した。これにもまた時間がかかった。

あっという間に外が暗くなってしまったが、仕事部屋に戻ってスマホを見てみると、前の前の職場の元同僚のKさんから着信履歴があった。

急いでかけ直すと、ちょっとしたトラブル、というか、トラブルというほどでもないのだが、ある関係者からのメッセージにちょっとした誤解が生じているといった内容についての相談だった。つまり間違った理解をしているメッセージが来たのである。

そのメッセージは複数の人に出されていたのだが、僕はそのメッセージの内容に誤解があることを、社内を駆けずりまわって、そのメッセージを受けとった社内の同僚に説明し、こちらも問題なく解決できた。そしてあらためてKさんに万事問題なしと電話をした。…どうもわかりにくいね。

まったく「居残り佐平次」だ。

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