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散歩リハビリ・14年後

10月21日(月)

今日は職場の一斉休業日とやらで、強制的な休日である。

このところ休みがまったく取れていなかったので、ひたすら体を休める日にしようかなと思ったが、締切をとっくに過ぎてしまった原稿や、もうすぐ締切の原稿などのことを考えると、どうにも心が落ち着かない。しかしそんなことを言っていたら体が休まらないので、録りためておいた古い映画を観たりしながら過ごす。

夕方近くになって、ふと思い立ち散歩に出かけることにした。明後日の出張の新幹線チケットを最寄りの駅のみどりの窓口で買ったり、銀行のキャッシュディスペンサーでお金をおろしたり(現金主義なので)、100円ショップで買い物をしたりと、いろいろな用事を思い出したからである。ただし自宅近くのバス停からバスに乗って最寄りの駅まで行き、駅前でいろいろと用事を済ませるだけなので、ここまでだと厳密には散歩とはいえない。

さて僕がいう散歩というのは、ここから先の話である。駅や駅前で諸々の用事を済ませたあと、駅の南口からまっすぐ伸びる道を、T字路となる突き当たりあたりまでひたすら歩く。その突き当たりの近くには、僕がたまに通う小さな独立系書店がある。そこまでの道をゆっくり歩いて、最終目的地を本屋さんに据えたのである。これは何より散歩のモチベーションにつながるのだ。

先日、職場の近くで行われている秋祭り会場まで歩いたとき、途中で両足がつってしまってエラいことになってしまった。そのことがまたくり返されるのではないかと心配していたが、杞憂に終わった。やはり先日は極度に疲れていたことが原因だったのだ。休みをとるって大事だ。

ゆっくりと本屋さんに向かって歩いていると、後ろで男女ふたり組が話している声が聞こえた。

どうやら女性の方は夜勤明けらしい。この時間に歩いているということは、夜勤から家に戻って、少し休んでからまた出かけたのだろう。

一緒にいる男性が、

「夜勤明けなのに、ずいぶんとしっかりお化粧しているね」

と聞くと女性は、

「だって、…今日は…デートでしょ?」

と答えていた。僕はそこから、ふたりの会話に釘付けになる。

男性は照れた様子で、

「でもさあ、夜勤明けなのに化粧をしているなんて、おかしいと思われない?」

「そうねえ」

「バレちゃうかな」

「大丈夫よ。女の子と出かけたことにすれば」

おいおい、聞き捨てならない会話だぞ!ふたりは未婚同士なのだろうか?それとも…。

もし後者だとすれば、この会話はたちどころに淫靡な雰囲気を醸し出す。

僕がゆっくり歩いていたせいで、途中、そのふたりに追い越されたのだが、どんなふたり組だろうと横顔をチラ見すると、決して若いカップルというわけではなく、アラフォーっぽい感じのふたりだった。うーん。ますます…。

そのふたりは途中で道を曲がったので、思わずついていきそうになり、「いかんいかん!」と頭を横に振って、まっすぐな道を歩き続けた。

ようやく本屋さんの前に辿り着くと、シャッターが閉まっていた。月曜日は休業日なのか、せっかくここまで来たのに…。

ま、でも散歩ここまで歩いて足がつらなかったことがわかったからよしとしよう。最寄りのバス停からバスに乗り、自宅に戻った。

そういえば、以前も「散歩リハビリ」というタイトルの記事を書いた記憶があると思って過去のアーカイブを調べてみると、14年ほど前にも書いていて、やってることがあまりにも変わっていないことに大笑いしてしまった。14年前との共通点は、

・書かなければいけない原稿があるのに、散歩に出かける。

・散歩の最終目的地は、本屋さんである。

という2点である。むかしも今も、やってることは変わらない。

ただ唯一違うところは、散歩の時間と距離が格段に違うということである。むかしはよく歩いていたんだな。いまでは考えられない。

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