秋も別れの季節
10月1日(火)
今日も目が回るくらい忙しかった。
「春は別れの季節」とはむかしよく言ったものだが、最近は「秋も別れの季節」と言えるほど、さまざまな別れがあった。
突然に去ってしまった同僚もいた。
4月から一緒に仕事をしていた派遣社員の方も、契約期間が終了したのか、9月30日で辞めるということを、その数日前に本人の口から聞かされた。僕はビックリして、
「そうだったんですか…。これまでいろいろありがとうございました」
「いえ、とんでもないです」
なかなか慣れない職場だったと思う。その人にとって、はたしてこの職場は働きやすかったのかどうか、しばらく反芻していた。
海外出張の手続きなどでお世話になった有期雇用の社員の方も、10月末に任期満了ということで退職されると聞いて、これもまたビックリした。これはメールで知ったのだが、僕はそのメールに「とても残念です。今までありがとうございました」と返信を書いた。
他の会社へ出向する若い社員もいた。この若者にもとてもお世話になった。仕事で海外を訪れた際に、そこで友だちができて、いまでもときどきその友だちに会いにいっている、というくらい、明るくて人なつっこい青年である。
ちょうど最後の日(9月30日)の終業時間を迎えるころ、廊下を歩いていると、同世代の社員有志たちが何人も集まって、出向する社員に花束を渡すタイミングをはかって待機していた。
僕はその若者たちに、
(彼に花束をわたすの?)
とアイコンタクトで聞くと、
(そうです)
とアイコンタクトで返事が返ってきた。まるでテレパシーだ。
僕はそのまま仕事部屋に戻ったが、どうやら花束をうまく渡せたらしい。
その後、仕事部屋を出て廊下を歩いていると、花束を手に持ったその社員とすれ違った。
「それ、さっきサプライズでもらった花束だね?」
「ええ、そうです。事前に花束のことは連絡を受けてましたけれど、まさか大勢で来てくれるとは思いませんでした」
それだけ彼に人望があるということである。
「いい職場です」と彼は言った。
「そうか、じゃあこれからもいい職場であり続けるために努力するよ。あなたも数年後には戻ってくるんだし」
と、僕は柄にもないことを言った。
今日の帰り際に「ご挨拶」という件名のメールが来た。差出人は、出版社の編集者である。
僕はその出版社のシリーズ企画に短い文章を載せた。何年もかかった長い企画である。その本の巻末には執筆者による座談会を載せることになっていて、当然僕もその座談会に参加した。座談会というのはなかなかない経験で、この仕事はけっこう辛かったけれども、得がたい体験で楽しかった。つい数日前、その本が完成して送られてきたばかりである。メールの差出人は、何度もメールを交わしたその本の編集担当者である。
「実は、昨日9月末日をもって退職いたしました。私にとっては、在職中に完成まで見届けることができた最後の1冊となりました。手ごたえ、やりがいのある御本に、39年半の会社生活の最後に関わらせていただけたことは、とてもありがたいことだったと思っております」
えええぇぇぇっ!!!
「『会うは別れの始め』って言ってね」
とは、映画『男はつらいよ』の寅さんのセリフだが、どうしてこんなに僕は別れを見届けなければならないのだろう?しかし見届けるのがよいのか見届けられるのがよいのか?と聞かれれば、僕はずっと見届ける側でいたい、というのが現在の心境である。
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