引きの強い三代
12月31日(火)
朝、娘が寝ている僕を起こして、
「『モアナ』を観に行きたい!」
と言いだした。いま公開中のディズニー映画『モアナと伝説の海パート2』のことである。
僕はパート1をちゃんと観ていないのだが、娘が「モアナ」の大ファンで、くり返し観ていたことは知っていた。
「わかったわかった。観に行こう」
起き抜けにスマホで予約をする。映画館はどこにしようかなあ。ここから一番近い映画館は、車を停めるところがないし、実家のあるF市にある映画館にしようか、それともその隣のC市の映画館にしようか。
迷ったあげく、自宅と実家のあるF市との中間にあるC市の映画館で観ることに決めた。
10時25分の上映時間になんとか間に合い、無事に映画を観ることができた。観客は当然、親子連れが多い。
僕はパート1を観ていなかったせいもあって、映画の世界観がわかっていなかったのだが、あっという間に引き込まれてしまった。
ディズニー映画とかピクサー映画って、頭のいい人たちがよってたかって作っている映画なので、面白くないはずはないのだ。
映画が終わって会場を出ると、
「あら、○○ちゃん!」
と娘を呼ぶ声がした。見ると、娘と同い年くらいの女の子とその両親である。娘を呼んだのは女の子の両親のほうだった。
「こんにちは」
と娘が言って、同い年くらいの女の子とも二言三言挨拶を交わしていた。
「じゃあまたね!」
しかし僕は、その家族が何者なのか、わからない。
その家族が去ってから娘に、
「いまの人、だれ?」
と聞くと、
「アンちゃんとそのお父さんとお母さんだよ」
と答えた。
「アンちゃんって、あのアンちゃん?」
「そうだよ」
娘の日常会話の中で、「アンちゃん」という名前は何度となく聞いていた。同じクラスのお友だちで、学童も同じである。学童の帰りには一緒に遊んだりして、とても仲のよい友だちの一人なのだ。
そのアンちゃんが、同じ時間に、同じ映画館で、同じ映画を観ていたのだ!
こんな偶然ってある??だって最寄りの映画館ではなく、車で行かないとたどり着けないC市の映画館なんだぜ。僕の気まぐれで、もしF市の映画館を選んでいたら、会えなかったわけだ。実際僕は、最初F市の映画館を予約しようとして、やっぱりやめようとキャンセルしてC市の映画館を選んだのである。
それにしても不思議だ。僕はアンちゃんはおろか、アンちゃんのご両親もどんな顔をしているか全然わからないのに、なぜかアンちゃんのご両親は僕の娘の顔をわかっていたのだ。
「どうしてアンちゃんのお父さんとお母さんは○○ちゃんのことを知っているの?」
「だって、学童が終わってから遊んでいると、アンちゃんのお父さんとお母さんがいつも迎えに来てくれるから」
なるほど、そういうことだったのか。僕は何も知らなかったことを恥じた。
「でもアンちゃんに会えてよかった。ほんとうはこの冬休みに遊びたかったんだよ」
会えただけでもうれしかったらしい。
それにしても、である。
母と私が「引きが強い」人生を送っていることは、以前にも書いたことがある。
このうえ娘までも引きが強いではないか!
引きの強さは遺伝するのか???
「鹿島さんこれって…」
「スピってます」
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