変更
12月27日(金)
僕は今年の紅白歌合戦を見るつもりはないのだが、星野源さんが紅白歌合戦で歌う予定だった「地獄でなぜ悪い」が、「ばらばら」という歌に変更になったというニュースは、少し気になった。といっても、自分の考えが十分に整理されているわけではない。
「地獄でなぜ悪い」は2013年に公開された園子温監督の映画『地獄でなぜ悪い』のエンディングテーマ曲である。僕もこの映画を観て、それがきっかけで星野源という人を認識したし、エンディングの曲に魅了された。
ところがその後2022年に監督の園子温さんによる性加害が複数の女性俳優から告発され、それをきっかけに映画界における性加害の問題について映画界が真剣に取り組むことが表明された。映画関係者たちが声を上げたことはとても意義のあることだと思う。
そうした経緯もあり、性加害疑惑のある園子温監督の映画の中で使われた、しかも映画と同名の曲を紅白歌合戦で歌うのは、二次加害にあたる可能性が指摘され、ふさわしくない、という判断から、当初の予定を変更し、別の曲に変更することにしたと、ニュースにあった。星野源さんと彼のスタッフチームは、「私たちは、あらゆる性加害行為を容認しません」と表明している。
ほぼ同じときに、ある有名な音楽プロデューサーも、この件について「星野さんとNHKは楽曲変更を考え直してもらいたい」という強い調子のコラムを発表している。曰く、星野源さんほどの人権意識の高い人が、紅白歌合戦で「地獄でなぜ悪い」を歌うのはあり得ない。それは園子温監督の性加害をウォッシングし矮小化することに加担してしまうことになる。この曲で励まされた人も多いという名曲だが、そんなことは問題ではない。人権より重い曲なんて、この地球のどこにもない。歌いたければ、ワンマンライブなどで自由に歌えばよい。NHKという公共放送で歌うことを問題にしているだけだ、と。
僕はこの音楽プロデューサーのコラムを読んで、いささか複雑な思いにとらわれた。
実際僕も、この楽曲には励まされたクチである。この歌は、映画の内容とはまったく関係なく、むしろ星野源さん本人の体験、とくにご自身が大病を患って入院したときの体験、が歌になっている。
僕が7年前に大病で入院したとき、どれだけこの歌に励まされたかわからない。つい先日1か月半ほど入院したときも、この歌が頭に浮かんだ。病気の種類は違うが、歌詞と今の自分の状況が見事に重なったのである。
僕は星野源さんの曲を、メディアから流れてくるものや薦められたものを聞く程度の人間だから、偉そうなことはいえないのだが、それでも「地獄でなぜ悪い」はいちばん好きな曲である。
しかしそんな個人的な思いはどうだっていいのだ。星野さんとそのスタッフチームがNHKという公共放送、しかも紅白歌合戦で歌わないという判断をしたのは賢明だろうと思う。一方で当初、この歌を選定したという最初の判断もわからなくはない。
有名な音楽プロデューサーは、「公共放送で歌うからダメなんで、ワンマンライブなどで自由に歌えばよい」と書いていたが、はたして今後、紅白歌合戦では歌いませんでしたが、自分のライブでは歌います、というわけにいくのだろうか。
そうなると、この曲は地下に埋もれてしまうのだろうか。個人がひっそりと聞くだけの曲になってしまうのか。発禁にならなかっただけよかったと思うべきなのか。僕にはよくわからない。
ほら、だから最初に、自分の考えが整理されているわけではないと言ったでしょう。
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