バーを繋ぐ話
鬼瓦殿
こんにちは。コバヤシです。
暑い中、ままならない時間をお過ごしのことと、お見舞い申し上げます。私の方は、先週、大阪から北海道と出張で渡り歩き、日曜は東京でビッグバンドの練習に参加したら、週明けからもうヘロヘロで何とか週末まで辿り着きました。
ただ、出張に行ったことで少しネタが出来たので、メールさせていただきます。
でも、書いていたらかなり長くなってしまったので、つまらなかったら捨て置いてください。
先週は、大阪から帰って来た翌日の木曜から、北海道に出張ということで、初日は苫小牧、翌日は札幌と移動し、無事、仕事とその後の懇親会も終わり、時計を見るとまだ9時と少し時間が有ります。
そこで、行こうかどうしようか迷っていた札幌の薄野にあるバーBを訪ねることにしました。
バーBは、以前のメールに何度か登場した浅草のバーDのNさんが札幌に行くならと紹介してくれて、7、8年に一度訪ねたバーです。バーBのマスターHさんとNさんは大の仲良しで、2人は札幌と浅草とお互い大分離れた場所に住んでいるにも関わらず、折を見て会っているようです。
大通り公園を横目に、薄野のビルのニッカの看板の前を通り過ぎてバーBのあるビルに着きました。
エレベーターに乗って上まであがると、沢山のボトルが店のガラス越しに飾られた見覚えのあるお店が有りました。
店の扉を開けると、マスターのHさんが「ウチはオールドボトルが専門のバーですが大丈夫ですか?」と尋ねます。私は二度目の訪問だったので、「大丈夫です。」と言いながら店の中に入ると、「ウイスキーとブランデーのどちらが好みですか?」と聞かれます。「ブランデーです。」と答えると、店の奥のブランデーの瓶が並ぶ棚の前のカウンターに案内されました。
暫くして「ご注文はどういたしますか?」と聞かれたので、「では、アルマニャックを2杯ほどお願いします。」と頼みました。マスターのHさんが「お客さまは当店は初めてですか?」と尋ねるので、「大分前に浅草のバーDのNさんの紹介で一度来たことが有ります。」と答えると、Hさんは「そう言えば、お会いしましたね。すっかり忘れていて、失礼しました。」と話します。続けて「Nさんのお店、ついこの間、再開したばかりですが、行かれましたか?」と聞くので、先日のメールでも書いたレセプションパーティーの話を、カクカクシカジカと説明すると、マスターのHさんは、「僕も再開する少し前に浅草と札幌で二度程会ったんですよ。」と言います。すると、常連と思しきご夫妻の奥さまの方が「そう言えば、Hさん、そのときの写真をSNSにアップしてましたよね。」と話すので、それを受けてHさんは「そうなんですよ。僕はNさんが大好きなんです。だってNさんは本当に素晴らしい人なんです!そうですよね。」と私の方を見て言うので、私が「確かにNさんは、本当に真面目というのか、誠実な人ですよね。」と答えると、Hさんは「僕とNさんはお酒で繋がっているのでは無く、心で繋がっているんです。僕とNさんが会うと、仕事の話なんか一切せずにどうでも良い話をずっとしています。と言っても、九割方、僕が喋ってるんですけどね。それをNさんは、いつも黙ってニコニコしながら聞いてくれるんです。本当に素晴らしい人です。」とNさん愛を全開に、カウンターにいる我々に熱く語ります。
先程のご夫妻もその話につられて「一度、Nさんのお店にも行ってみたいですね!今度、東京に行く時に紹介してくださいよ。」とHさんに言うので、Hさんはちょっと考えてから「浅草のNさんのお店に行くなら私も一緒に伺った方が良いかもしれませんね。お客さんはどう思います。」と、また私の方を向いて尋ねます。私は「そうですね。Nさんは何せ本当に真面目な方なので、我々の話だけ聞いてお店に行かれると、ちょっと戸惑うかもしれませんね。やはり、Hさんと行く方が良いかもしれませんね。」と答え、続けて「初めて行くと色々な説明を受けるんですけど、例えば、コニャックはグラスに注いだ後、五分ぐらいは飲まずに香りを楽しんでください、とか、水は飲んだらエグ味が出るのでダメですとか、結構、細かい説明なので、初めてだと大分戸惑うでしょうね。」と答えました。
Hさんは、やはりそうだなあという顔をして「大分前に私の知り合いのバーテンダーの若い子が、Nさんのお店に初めて行った時に、お客さん少し香水の香りが強いので手を洗って来てくれませんか?と言われて、結局、2度も手を洗いに行かされたそうなんですよ。確かにその子が手首につけた香水の香りがちょっと強かったみたいなんですけど。でも、その子は素直な良い子だったんで、ちゃんとNさんのことを理解してくれたんで、良かったんですが。まあ、今では彼も大分Nさんと仲良くなったみたいです。」と話を続けます。
Nさんは本当に真面目で誠実な方なので、自分が出すお酒をきちんと楽しんで欲しいという思いが強く、特に初めての人にとっては結構ハードルが高いところがあります。私もかなりNさんのお店には通っていたので、ネットなんかの評判だけを見て、誤って迷い込んで来た若いカップルが、Nさんのコニャックを美味しく飲む為には云々の口上を長々と聞かされて居た堪れない様子でいるのを何度も目撃しています。
そんなこんなで気付けば11時も回ったので、「では、明日は東京に帰って浅草のNさんのお店に行くつもりなので、HさんのNさん愛を伝えておきますね!」と言って、店を出ました。
翌日夕方に東京に帰り、早速、浅草に向かいました。
先日のレセプションパーティーには行ったものの、Nさんのお店にきちんと伺うのは実に一年半振りです。少しドキドキしながら、お店のドアを叩くとNさんが満面の笑みで私を迎えてくれました。自分て言うのも何ですが、Hさんは私のことが大好きです。
お店には私の他に客は誰もいませんでしたが、カウンターの向こうにはNさんの他に若い女性がいます。席に座ると、Nさんは「カウンターの中がちょっといつもと違うと思ったでしょう。開店したばかりで、特に週末は忙しいのでヘルプの方に入って貰ってるんですよ。」と説明してくれます。Nさんは女性に説明するように「コバヤシさんはマイナスイオンが出ているというのか、お店に居てくれると本当に癒されるんですよ。この前、Nの奥さんも、同じことを言ってました。」と話すと、付け足すように「Nというのは、元々、トンカツ屋さんだったんだけど、息子さんがお寿司の修行をしたんで、だったらトンカツもお寿司も出しちゃえと、トンカツとお寿司ので店Nになっちゃたんですよ。お刺身や海老真薯みたいな美味しい和食も食べられる上に、カニクリームコロッケなんかの洋食も美味しくて。でも僕は分厚い肉を焼いた生姜焼きが一番好きなんですけどね。」と説明します。
私も、そうそう、と言いながら「マイナスイオンと言えば、17、8年前に千葉の工場で働いていた時、当時の上司に業務報告をしていたら、上司が居眠りを始めたちゃったんですよ。まあその上司は当時、かなりの激務をこなしてたんで大分疲れてたみたいなんですけど。仕方がないから起きてくださいと肩を揺すったら、目を覚ましたその上司が、コバヤシ、お前、クマのプーさんだろう!アルファ波出してるだろ!と逆ギレし始めちゃって、なんてことがありましたよ。」と、ちょっと調子に乗って話を繋ぎます。(ちなみにその逆ギレした上司は、私と腐れ縁のウチの会社の副社長Mさんです。)
学生時代の私を知っている貴君からすれば、いつも暴言を吐いていた私が、まさか癒し系と評価されているなどとは思いもよらないとは思いますが、私自身もオカシイとは思いつつも、周りの評価はそうなっているようです。これも年月が成せる業でしょうか。
そんな話をしながら、Nさんにお酒を注文すると「じゃあ今日はコバヤシ、スペシャルバージョンでとっておきのコニャックを出しますね。せっかくだから、この前ヨーロッパに行った時に買って来たロブマイヤーのグラスでお出ししましょう。」と言って、グラスにお酒を注いでくれました。
私は、そのお酒を飲みながら、前日に札幌のバーBに行ったこと、そしてマスターのHさんがNさん愛を熱く語っていたことを話しました。それを聞いたNさんは「そうなんですよ。Hさんと会うと、いつもHさんがずっと喋ってるんですけど、楽しそうに喋っているんで、せっかくだから気持ち良く喋って貰おうと、黙って聞くことにしてるんです。」と優しく話してくれます。
久しぶりにNさんと会ったこともあり話は尽きなかったのですが、そうこうするうちに、私は一杯目のコニャックを飲み終わりました。
するとNさんは私のグラスを見て「さすがコバヤシさん、やっぱりグラスが真っ白ですね。」と言いながら、ヘルプの女性に「コニャックは時間をかけてゆっくりかけて飲むと、お酒の全ての要素が引き出されて、こんな風にグラスが真っ白になるんです。これを僕はパーフェクトグラスと呼んでいます。」と説明します。女性はふ〜んという顔付きで聞いているので、私も口を挟んで「ちなみにパーフェクトグラスなんて言葉を使うのはNさんぐらいです。しかも、Nさんは、この白くなった私のグラスを写真に撮って、店のお客さんへの説明に使ってるんですよ。たまに、私のすぐ横で写真を見せていたりするんで、ちょっと恥ずかしかったりするんですけどね。まあ、私も公認してるんでいいんですけど。」と補足します。更にNさんが続けて「せっかくのコニャックを直ぐに飲んでしまう人がいるんで、そういう人達への説明にコバヤシさんのパーフェクトグラスの写真を見せて説明するんです。あっ、せっかくだからニューバージョンのパーフェクトグラスとしてこのグラスの写真を撮って、また使わせて貰ってもいいですか?」と言うので、私は「ただの飲み終わった後のグラスですから、私のものでも何でも無いし、どうぞご自由にお使いください。」と言うと、Nさんはグラスを持ってカウンターの端っこに行って、嬉しそうに色々な角度で写真を撮っていました。
そうこうする内に、お店はお客さんで一杯になって来ました。
Nさんも私ばかりに構ってはいられないので、その後は独り静かに美味しいコニャックを堪能させてもらいました。
最後の一杯を飲み終わる頃には時計は11時を回り、かれこれ3時間以上は店に居座ってしまったのでお会計をして、満ち足りた気分で店を出ました。
こうして、私は、バーテンダーの皆さんのおかげで、そこそこ楽しく過ごさせてもらっています。
今回も書き始めたらかなり長くなってしまいましたが、お楽しみいただけたでしょうか?
また暫く間が空くかもしれませんが、ネタが出て来たらメールします。
では、またそのうち!


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