サラリーマンは腐れ縁 ~自慢話~
鬼瓦殿
こんばんは。コバヤシです。
大分暑い日が続いていますが、体調は大丈夫ですか。
ネタ切れで困っていたら、腐れ縁の上司が小ネタを提供してくれたので、忘れないうちにメールさせていただきます。
今日も朝イチから、20年来の腐れ縁の上司、今では私の会社の副社長になってしまったMさんへの業務報告です。
今日は案件が多かったのと、私の報告の後すぐにMさんに来客が有りお尻が切られていたので、早めに入ってしまおうと副社長室を覗くと、丁度暇そうだったので、良いですか?と言いながらズカズカと部屋に入り、返事も待たずに自分のパソコンを副社長室のモニターに繋ぎ、さっさと報告の準備にかかります。
「今日は何の報告だ?」とMさんが聞くので、カクカクシカジカと、今度の会議の議題や資料や、私が企画した9月に開催する若手社員の社長報告会(本当はそんな面倒なことはしたくなかったのですが、行きがかり上、やると言ってしまった)の概要の報告と相談です、と答え、早速、説明を始めました。
Mさんからは、あの会議にはアレも報告させろとか、社長報告会には上司達もオンラインで良いから必ず参加させろとか、社長報告会に部下を出張させる予算が無いと言うバカがいたら、お前の上司の接待ゴルフ削らせればいいだろう!と言ってやれなどと、いつものように、あーだこーだ言いだします。私の方も、いつもの調子で、ハイハイとか、え〜っ!などと言いながら報告を進めます。
気付けば、意外に報告が早く終わり副社長室を出ようとしていたら、Mさんは「ちょっと自慢していい?」と嬉しそうに私を呼び戻します。私は「また、なんか良い本買ったとかいう自慢ですか?」(以前書きましたが、須賀敦子全集を買ったと自慢されたこともあります)と聞くと、「お前、穂村弘って知ってるか?」と逆に質問しできます。「確か有名な歌人でしたっけ?前にMさんに、穂村弘と川上未映子だったかの対談集を貸して貰ったような。」と答えると、「そう、その穂村弘だよ。」と言って、少し派手目な表紙の一冊の本を取り出しました。
Mさんによると、最近、緑内障に侵され目が不自由になってきた穂村弘が書いた本だということで、「満月が欠けている」という本を見せてくれました。
私は「その本がどうしたんですかか?」と聞くと、Mさんは本のページをめくりながら、「ちょっと見て見てみろよ。この本の終わりの三分の一ぐらいは、穂村弘が選んだ、古今東西の病について読んだ歌が紹介されてるんだよ。」と言うので、私はちょっと興奮気味に「まさか、Mさんの歌が載ったんですか!?」と聞き返すと「そうそう、ほらこのページに寺山修司の歌が紹介されてるだろ、で、一番最後は北原白秋の歌で終わるんだよ。」と言いながら、またページを前にめくって行くと「ほら見ろよ!ここに俺の歌が載ってるんだ!どうだ、凄いだろ!寺山修司と北原白秋の間だぜ!娘にも自慢したら、流石にコレは凄い!と言ってくれたよ。」と嬉しそうに話します。
私もちょっと嬉しくなって「コレは確かに凄いっすね!自慢したい気持ちも分かりますよ。」と答えると、Mさんも「そうだろ!凄いだろ!」と嬉しそうに繰り返します。
実はMさんも、ここ数年目の難病を患って両目のレンズを変える手術をしたのですが、今一つ芳しく無く、かなり見えにくいと嘆いています。
Mさんは、興奮気味に更に、出版社から掲載許可の連絡があったことや、掲載のお礼としてこの本を出版社が送って来てくれたことを話してくれました。
他人ごとながら、ちょっと私も嬉しくなったのと、貴君もちょっとは面白がってくれるかな、とメールした次第です。
と書いて、このメールを終わらせようとしていたところで、そういえば高校時代の貴君が雑誌に書いた文章を読んだ、私の母校の名誉教授だった亀井孝さんが貴君の家に電話してきたということを思い出し、あの時も貴君から自慢された私はなんだか嬉しいような、誇らしいような気持ちになったことを思い出しました。
〔付記〕
『満月が欠けている』(ライフサイエンス出版、2015年)をさっそくAmazonで注文した。僕は穂村弘さんの本、とくにエッセイが好きで読んでおり、穂村弘さんの最新刊にコバヤシの上司の歌が掲載されていると聞けば買わないわけにはいかない。こうして私の人生にまた1冊が加わってゆく。
高校時代に亀井孝先生から電話をいただいたエピソードも、当時は誰にも言わなかったが、コバヤシにだけは打ち明けていたのか。上司のMさんと同じことをしていたんだな、と苦笑を禁じ得ない。
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