同姓同名
10月30日(木)
書くことがないのでほんとうにどうでもいい話を一つ。
あることがきっかけで、各病室の前の名前を確認することが癖になってしまった。ひょっとしたら、知っている人がいるんじゃねえか、という気がしたからである。
ある病室で、心当たりのある名前を見つけた。
高校時代の1学年上の先輩の名前である。
別に部活の先輩というわけではない。在学中はおろか、いまに至るまでお話をしたことがない先輩である。
なぜ僕がその名前を知っているかというと、その先輩は後に世界的なミュージシャンとして成功するからである。その先輩のことは、このブログのどこかに書いたはずだが、ヒマな人は探してみてほしい。ま、探したところでたいしたことは書いていないのだが。
しかしそのお名前のお方が、病室から出てくる姿を一度も見たことがなく、ますます僕をミステリアスな気持ちにさせた。早く会いたいと、僕はその先輩の幻影にすっかり取り憑かれてしまった。
しかし今週、意外なことが起こった。
今週の火曜日から、4人一組で行うリハビリをすることになった。このリハビリは申込制になっていて、毎日、固定メンバーが同じ体操をするというものである。今週になって、リハビリがハードになったのは、新しくこの体操をはじめたことによる。体操と言ってもとてもキツいのだ。
で、各人は、ラジオ体操の時にもらうようなカードをもらい、そこに体操した回数だけリハビリスタッフのハンコをもらう。
その各人のカードを見るとはなしに見ると、なんとそこに、高校の1学年先輩の名前が書いてあるではないか!
とうとう僕は、その名前の方と対面できたのである!
しかし、その方は、僕よりはるかに年上の女性で、はっきり言うとおばあちゃん、だったのだ。
結論を言ってしまえば、同姓同名の別人だった、ということになる。
しかしそれで、僕は胸のつかえがとれた。
ああ、僕は病室の名前を見て以来、何度その幻影に取り憑かれたことであろう。僕は福永武彦の小説「廃市」の「なんと僕は長い間、見たこともない郁代さんの幻影に憑かれていた」という一節を思い出した。
同時に僕は、山田洋次監督の映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のある場面を思い出した。わかる人がわかればよろしい。


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