司馬遼太郎派、ではない
10月21日(火)
「大人になって愛読書が司馬遼太郎だという人は信用できない人物だと思ってよい」と、ある著述家が言っていた。司馬遼太郎をおもしろいと思うのは中学生くらいまでで、大人になれば司馬遼太郎は卒業するはずだというのがこの発言の真意のようだ。
僕が言ってるんじゃありませんよ。ある著述家が言っているんだ。
しかしその著述家の言葉には幾ばくかの真実があるような気がしてならない。司馬遼太郎のファンの人、ごめんなさい。
僕は一応高校生の頃、司馬遼太郎の本を読んでみた。『項羽と劉邦』が最初だったろうか。なかなかおもしろいと思った。
『関ヶ原』も読んでみた。司馬遼太郎の小説を原作にして早坂暁さんが脚本を書いたTBSテレビの大型時代劇『関ヶ原』を小学生の頃に見て、とてもおもしろかったからである。
しかし結果として、早坂暁さん脚本のドラマの方がはるかに面白かった。
『新選組血風録』も読んでみた。最初のきっかけは大島渚監督の映画『御法度』(1999年)を映画館で観たときだったと思う。
その後、三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ『新選組!』を観たのが2004年。それを観たのをきっかけに、むかしのドラマがあることを知り、結束信二が脚本を書いた連続ドラマ『新選組血風録』(NET、1965年)をDVDボックスで全編観てみたら、これがメチャクチャおもしろかった。原作にない、結束信二オリジナルのエピソードもあって、それがなによりおもしろかった。あんまりおもしろいので、結束信二の脚本集を買ったほどである。
いちばん最近買ったのは、『峠』である。10年近く前に仕事で河井継之助記念館を訪れたときに、河井継之助という人物に興味を持ち、『峠』を読んでみようと分厚い文庫本3巻を買ってみたが、なんとなく読む気が起こらず、いまに至っている。『峠』も2022年に小泉堯史監督によって脚本が書かれ、映画化されているようだが、私は未見である。
総じて、司馬遼太郎をおもしろいと感ずるかどうかは脚本家の腕次第ということになる。
なぜこんなことを思い出したかというと、本日誕生した新しい総理の愛読書の5冊のうちの一つに、『坂の上の雲』があげられていたからである(日本経済新聞の記事による)。僕はそれを見て、「ふ~ん」と思った。感想は「ふ~ん」だけである。いまでも愛読書なんだ、と。司馬遼太郎の小説をあげておけば万人受けするかも知れないという計算がはたらいたのではないか、という邪推まで生まれた。
ほかの4冊もパッとしない本ばかりで、やはり感想は「ふ~ん」であった。
僕は「大人になって愛読書が司馬遼太郎だという人は信用できない人物だと思ってよい」という言葉を、ふたたび噛みしめたのである。
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コメント
「5冊」は同じ本を認識しているという前提でコメントしますが、サラリーマンの私としては「松下幸之助」の方に引っ掛かりますかね。
リーダーとしては安牌すぎやしないかと。「松下幸之助はこう言っています。○○」と偉い人が言う○○の部分は、今で言う切り抜き動画の如く「格言カレンダー」のフレーズで、実際の発言があった状況や時代背景を理解せずに言ってる方が多かったんですよね。
いかにも元公務員。官僚コンプレックスを隠すかのように「松下幸之助」を出してくる弊社の幹部に興ざめしつつ、自分を騙しながら働く今日この頃です。
なお、司馬遼太郎作品の中でも「坂の上の雲」を選んで発信しちゃう所が、この総理の底が見えるというか・・・。本音と建前の使い分けができない人なんだろうなとがっかりしています。
投稿: 江戸川 | 2025年10月22日 (水) 20時36分
多分同じ「5冊」を認識していると思います。
尊敬するイギリスのサッチャー元首相の本とか、自分が松下政経塾にいたという理由で松下幸之助の本をあげるのは、支持者向けのアピールでしょうね。僕は首相がどんな本を読んでいるかに興味があり、それを面白がることが趣味です。
http://yossy-m.cocolog-nifty.com/blog/2023/08/post-e886ec.html
投稿: onigawaragonzou | 2025年10月23日 (木) 16時39分