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先が見えたり見えなかったり

10月9日(木)

言語聴覚療法が、ようやくノルマのチェックテストを終えた。とくに問題がなかったので、これからは毎日ではなく、週1回くらいのペースで行うらしい。

以前にあったテストで「常識テスト」というものがあった。教科書に載っているような知識を試す問題が口頭で出されて、それを何も見ずに口頭で答えるというものである。

だいたいは簡単な問題だったのだが、どうしても答えられない問題があった。

「『不思議の国のアリス』の作者は誰ですか?」

不意に言われたので作者の名前が出てこない。というかそもそも作者に注目していなかった。映画は観たことはあるのだが。

「クレオパトラとはどんな人物ですか?」

「エカチェリーナ2世とはどんな人物ですか?」

どんな人物って言われても…。

この2問にもとっさには答えられなかった。考えてみればいずれも常識に属するクイズである。もちろん、読者(ダマラー)のみなさんだったら誰でもすぐに答えられるだろうが、僕は恥ずかしながら答えられなかった。どうも世界史に弱いらしい。それとも加齢による物忘れなのか?

今日は最後のチェックテスト。いくつか課題が出たのだが、その中にこんな課題があった。

①今までで一番面白かった休暇はどんな休暇でしたか?

②今までで一番印象に残った思い出はなんですか?

これを口頭でコンパクトにまとめなさいという課題である。考える時間はまったくない。

「①今までで一番面白かった休暇は、16年前の2009年に韓国へ1年間留学したことです。語学学校に通って韓国語を習ったりして、充実した休暇を過ごしました」

ほんとうは休暇ではなく研修で行ったのだが、別に正確さを求められているわけではない。

「②今までで一番印象に残った思い出は、2023年の春に僕が責任者として行った職場のイベントです。企画を発案し、そのために全国から貴重なものをお借りするために交渉したり、実際に借りに行ったりと、自分が満足ゆくまで準備をしました。会期中は友人や知り合いがたくさん見に来てくれて、自分にとっては生前葬になりました」

聞いている言語聴覚士さんは、なんのこっちゃわからなかっただろうが、そんなことどうでもよかった。

とにもかくにも、かくして言語聴覚療法は一段落した。これからは右の手足のリハビリが中心になるだろう。

その、足のほうの理学療法は、なかなか先が見えない。

以前にくらべれば格段に足が動くようになり、杖を使って少しずつ距離を伸ばして歩けるようにはなったのだが、相変わらず歩き方は不安定で、僕の実感では、リハビリが頭打ち状態になっている。

リハビリの頭打ちは誰にでもあることですと理学療法士さんは言うのだが、僕の理想は、杖なしで、この足で歩きたいという1点に尽きる。

しかし本当にその理想が実現するだろうか。先の見えないリハビリに、少しだけ落ち込む毎日である。

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