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実験台

10月2日(木)

毎日、平日休日に関係なく、リハビリが1日4回、合計3時間ほどあるので、体が完全に疲労している。

疲労の原因は、リハビリに一所懸命取り組まなければならない理由があるからである。

「今度、病院内の研究会やそとの学会で研究発表をすることになったのですが、鬼瓦さんのリハビリの実践例について紹介してもいいですか?」

僕の主担当の理学療法士さんが言った。

「それは全然かまわないですよ」

「さすが、話が早い」

「でも僕のリハビリの実践例なんて役に立つんですか?」

「きっと面白い研究になりますよ」

その理学療法士さんは、どちらかというと研究肌で、いろいろ仮説を立ててそれを検証するのが楽しいらしい。理学療法士としてのありきたりの技術を極めるより、リハビリの方法そのものの開発をすることが好きなようだ。

で、僕がその実験台にされた。僕の症例が適度に興味深かったこともあるのかもしれない。

さあ、そこからが地獄の特訓である。

彼は、自分の仮説を証明するために、独自の訓練方法を編み出す。それに僕がつきあわされるのである。

僕のリハビリの様子は、その都度映像に収められる。発表は映像を使って行うためであろう。

僕は、彼が考えたプログラムにしたがってひたすら地味な特訓をする。しかもちゃんと結果を出さなければならない。そうでないと彼の発表に泥を塗ってしまいかねない。

「こういう方法を試してみましたが、結論的には効果がありませんでした」ではあまりにも申し訳ない。

だから必死で言われたとおりの方法をこなし、その結果、効果があるということを証明しなければならないのだ。

そのため、1日の平均を超える負荷がかかり、疲労するのである。

いまのところ、少しずつ効果が上がっているようにも思える。

「もし、この方法がうまくいかなかったらどうするんでしょう?」

「その時は別の仮説を立てて一からやり直しです」

どうか、この方法がうまくいきますように。

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