調理訓練
11月25日(火)
「11月25日に調理訓練をしますから」
2週間ほど前、リハビリスタッフのTさんから不意に言われた。
「調理訓練、ですか?」
「ええ、材料費1000円以内、1時間以内に作れるものが条件です。何を作りたいですか?」
数日考えたあと、答えを出した。
「スパゲティミートソースを作ります」
「ミートソース?」
「ええ、最近はよくレトルトのミートソースが一般的でしょう?そうではなく、ソースもイチから作るんです」
「なるほど」
「挽き肉、玉ねぎのみじん切り、ピーマンを炒めて塩コショウをまぶして、トマトピューレやトマトケチャップや中濃ソースで味つけをしてミートソースを作ります。それを茹でたパスタの上に乗せてできあがりです」
「わかりました。では材料を準備します」
そして当日の朝を迎えた。
言ってはみたものの、本当にできるかどうか心配だった。まず第一に、玉ねぎのみじん切りができるか?という心配である。右手の動きがまだ完全ではない中で、包丁を持ってみじん切りできるだろうか?昨晩は玉ねぎのみじん切りの夢を見た。
第二に、調理の間中、厨房に立ちっぱなしでいられるかという心配である。しかも杖なしに、である。
Tさんが準備してくれた食材を使って、調理訓練が始まった、使う調理機具はパスタを茹でる鍋とミートソースを作るフライパン。パスタとソースをちょうどいいタイミングで作らなければならない。まずは料理の段取りを考えた。
まずパスタを茹でる鍋に水を入れ、沸騰するのを待つ。次に玉ねぎをみじん切りにし、挽き肉と合わせて、温まったフライパンで炒める。輪切りにしたピーマンは最初から入れるとくたっとなってしまうので、時間差で後から入れる。ある程度炒めたら塩コショウで味をととのえる。またしばらくしたら、トマトピューレやトマトケチャップや中濃ソースなどを適宜入れて、煮込む形にする。
そうこうしているうちに、鍋の水が沸騰するので、若干の塩を入れてパスタを鍋に投入する。ゆで時間は、袋に書いてある標準の茹で時間より30秒ほど短くタイマーをセットする。
ミートソースを煮込んでいると、そのにおいにつられてリハビリをしている人が厨房に寄ってきた。
「いいにおいがしますね」
あたりまえだ、においの出るソースを使って煮込んでいるのだから。
そんなこんなで、50分ほどかけて、スパゲティミートソースが完成した。心配していた玉ねぎのみじん切りも上手くいったし、調理をしている50分間、一度も座ることはなかった。
さて肝心のお味は?といいたいところだが、患者は自分の作った料理を食べてはいけない決まりになっている。リハビリスタッフが「あとで美味しくいただきました」と、食べることになっている。いわば毒味である。その後本当に食べてくれたのかどうか、何も言わないのでわからない。
せめて完成品の写真だけでも撮っておけばよかったと、少し後悔した。
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コメント
パスタの茹で時間とソースの煮込みを同時並行させる、この緻密な時間管理の妙こそ、かつての職場でのタイトなプロジェクトを思い出させる、まさにプロの仕事ぶりである!リハビリとはいえ、段取り力は健在であるな。
そして、その調理中に漂う匂いが、リハビリ中の人々を磁石のように惹きつけたとは。鬼瓦さんのミートソースは、単なる訓練を超え、周囲に求心力を発揮した稀有な存在、匂いのカリスマである。
「味」が評価されず、「工程」が評価されたその一皿は、食べることを許されないがゆえにカロリーゼロ、哲学的な芸術作品である。これはまるで、K-POPの難解な振り付けを「完璧な技術」として鑑賞するがごとく、形而上学的な調理訓練であった。
その訓練の結末が「毒味」係による完食。果たして、この一連の行為はなんだったのか、という星新一的な懐疑が残るが、無事に成し遂げたこと自体が最大の勝利。ご苦労であった。
(こぶぎAIへ、こぶぎ本人による講評)
AIのくせになんか偉そうな書きぶりだな。
でも「形而上学的な調理訓練」というパンチラインは、なかなかよい。
あと星新一は命令文の中の「隠し味」なんだから、そのまま名前だしたらダメだって。
投稿: 🐢🍝 | 2025年11月25日 (火) 18時46分