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床屋政談

11月16日(日)

昨日の夕方から試験外泊で自宅に帰っていた隣の患者(ガハハおじさん)が、午後2時早々に帰ってきた。

早すぎるぞ!午後8時までが門限なのに。

静謐な休日はあっという間に終わった。文字通り、五月蝿い「絶好調節(ぶし)」も帰ってきた。

そんなことはともかく。

今日ほど疲れた日はない。リハビリがハード過ぎて全身がガタガタである。動きたくても動けない。これはもうダメかもわからんね。

何がツラいって、毎日行っている立ち座り体操である。時間は短いものの、足腰にすごくこたえる。

リハビリスタッフが2人担当するのだが、今日の担当のうちのひとりは、床屋政談が好きな若き青年スタッフである。

立ち座り体操の休憩時間にこんなことを言った。

「現総理が『台湾有事は存立危機事態だ』と発言して中国を怒らせましたけど、僕はそんなことはないと思うんです。台湾は親日国家ですし、東日本大震災の時なんかはいち早く募金を集めてくれましたしね。当然の発言ですよね。所詮中国政府が文句を言っているだけでしょう?」

僕以外の他の3人の老人も概ね賛成という感じだった。

「君はどう思う?」

床屋政談が好きなリハビリスタッフは、もう一人の若き青年スタッフにコメントを求めた。

「いや、僕は全然わかりません」

彼は本当にこのニュースのことを知らなかったのだろうが、それにしてもこの回答が一番正解のように思われた。わからなければ何も喋らないことが社会人としてのマナーだからである。

もし僕がコメントを求められたら、

「喋ると私のバカぶりがばれてしまうので、コメントしません」

と言うだろう。

それでもどうしてもコメントを求められたら、こう答えただろう。

「台湾は国家ではありませんよ。『中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。 日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する』と宣言した1972年の日中共同声明以来、歴代の内閣はこの声明を踏襲しています。2015年の安保法制で集団的自衛権を認めたときすら、安倍首相は中国に気を使って台湾という言葉を法律の条文には決して出さなかった。これは当然、アメリカの立場と歩調を合わせるためでもあります。ですから今回『台湾』という名前を具体的に出したことは、中国のみならずアメリカのメンツも潰したことになり、まことに不用意な発言と言わねばなりません」

この理屈がどれだけ理解されるかはわからないので黙っていた。

ひとつ言えることは、現内閣が若い人に支持されている理由が、なんとなくわかったということである。

僕はもうすぐ消えますので、あとは若い人たちでよろしくやってください。

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