« 涙は枯れない | トップページ | どのバージョンが好きか? »

これもまた自慢話

これもまた自慢話。

前の職場時代に、学内の一部局が発行している定期刊行物に、大学生時代の思い出にかかわるちょっとしたエッセイを書いた。いまでこそ学内で発行している定期刊行物は、学外の一般の人たちの目にも触れるため、長い文章は嫌われ、カラー刷りで短い情報を発信するツールになってしまったが、僕がいた頃は、やはり一般向けの宣伝の役割はその当時からあったものの、いまよりも地味な体裁であった。

その定期刊行物は学内の全教員にも配布されたが、僕と同世代のある同僚から次のようなことを言われた。

「あのエッセイ、面白くて夢中で読んじゃいましたよ。メールボックスで受け取って、自分の研究室に戻ろうと階段を上っている間に、なんとなく読み始めたら止まんなくなっちゃって、階段の踊り場のところで読み終わるまで立ち止まってしまいました」

僕は驚いた。そんなことを言われたのは初めてだったからである。しかもふだんは口数の少ない同僚なのである。

しかも、その同僚は僕とは専門分野がまったく異なる、堅物で有名な法律の専門家だったのである。その同僚とはとくに親しいわけではなく、「学食」で見かけると、近くの席に座って多少の会話をする程度の間柄だった。お互い孤高の人間だったからね。

そういう堅物の法律家を夢中にさせたエッセイを書けたことに、僕は少なからず誇りを持った。他の誰にも感想を言われたことはなかったが、僕はその同僚一人に言われただけで満足だった。

文章なんて、それで十分だという思いを強くしたのは、それがきっかけである。

|

« 涙は枯れない | トップページ | どのバージョンが好きか? »

思い出」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 涙は枯れない | トップページ | どのバージョンが好きか? »