病院じまい
「墓じまい」という言葉があるが、今日「病院じまい」をした。
…と書くと「完全復活をしたですね」と早合点する奴が出てきたりするのたが、そうではない。
僕は8年ほど前に大病にかかって以来、月に一度はこの病院にお世話になった。車で1時間以上かけて一人で通っていたのだが、今回ばかりはそうはいかない。妻の運転なしには行けないとなると、片道1時間以上の時間が妻には負担になる。それでほとんどの治療を近所の総合病院に移すことにしたのである。その方が妻の負担が幾分楽になる。僕としては8年近く通っているので思い入れが強かったが仕方がない。
今日はその最後の診察である。僕にはその病院でお世話になった先生が二人いて、そのうちの一人が主治医にあたるH先生である。H先生にはすでに事情をお話ししていて、今度から通うことになる近所の総合病院に紹介状を書いてくれた。
もう一人は別の科に所属するK先生である。K先生とは3カ月に1度ていど、病状を報告する。というのも、僕の大病を「発見」してくれたのがK先生だからである。
いまも思い出す。気の進まない僕に対して、その日のうちに各種検査を行い、その原因を突き止め、同じ病院のH先生を紹介してくれた。他のクリニックの先生も紹介していただいた。そしてその日のうちにあれよあれよと治療や手術の段取りが決まったのである。
自分にとっても濃い1日となった。看護師さんからも「今日1日でいろいろなことがありましたね。びっくりされたでしょう」と慰めてくれた。
いまこうして生きていられるのはこの二人の先生のおかげである。K先生にも転院したいという希望を伝えなければならない。
今日の診察でそのことを言うと、
「いままでよく頑張ってきましたね」
と握手を求めてきた。僕はつい泣きそうになり、
「いままで本当にありがとうございました」
と返すのが精一杯だった。それ以上何かを言うと嗚咽になりそうなのでそれ以上何も言えなかった。
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